MFTトレーニングのやり方を歯科医師が解説。基本的な方法や継続するコツも

この記事を執筆した人:
三ツ境駅前スマイル歯科 院長 樋田秀一
院長の樋田は、インビザラインをはじめとしたマウスピース矯正に豊富な知識と経験を持つ歯科医師です。昭和大学歯学部卒業後、床矯正・ブラケット矯正・MEAWなど多領域の矯正理論を学び、2019年にインビザライン認定を取得。iTeroによる三次元解析を用いた精密診断と、咬合・骨格を統合的に評価する治療設計に定評があります。
所属学会は、日本小児矯正研究会(指導医)・国際歯周内科学研究会(指導医・理事)など多岐にわたり、科学的根拠に基づく臨床を重視。成長期の顎発育から成人の審美矯正までカバーし、専門性と信頼性の高い医療情報の発信にも取り組んでいます。
「口がポカンと開いて口呼吸が習慣になっている」「舌の位置が気になる」など、お口の使い方について気になることはありませんか?こうしたお口周りの習慣や機能を整える方法の一つに、MFT(口腔筋機能療法)があります。MFTは、舌や唇、頬などの筋肉を正しく動かし、適切に使えるようにするためのトレーニングです。歯並びや矯正治療、口腔機能との関係から、小児だけでなく、大人にも行われることがあります。
今回は、MFTトレーニングの基本的なやり方や継続するためのポイント、トレーニングを行う際の注意点について、わかりやすく解説します。
MFTトレーニングとは

MFT(口腔筋機能療法)とは、舌や唇、頬などのお口周りの筋肉を正しく使えるようにするためのトレーニングです。
舌の位置や唇の閉じ方、呼吸、咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)、発音など、お口のさまざまな機能を適切に使えるようにすることを目的としています。
MFTはお子さまだけでなく、大人にも行われます。ただし、年齢によって口腔機能の発達段階や改善したいお口の癖などが異なるため、トレーニング内容や進め方も一人ひとり異なります。
大人のMFTトレーニング
大人のMFTでは、すでに長年身についている口腔習癖(お口の癖)や舌・唇などの使い方を見直し、正しい口腔機能と動きを習慣化することが中心となります。
たとえば、口呼吸や低位舌(舌が下がっている状態)、舌を前に出して飲み込む「異常嚥下癖(いじょうえんげへき)」 などがある場合には、舌を正しい位置(スポット)に保つ練習や、唇を適切に閉じるトレーニング、正しい嚥下方法を身につける練習などを行います。
特に矯正治療を受けている方では、治療後の「後戻り」を防ぐために、歯並びに影響する口腔習癖を整える目的でMFTを併用するケースもあります。
大人の場合は、長年の習慣が身についていることも多いため、トレーニングを繰り返し行い、日常生活でも正しい舌の位置や口の使い方を継続して意識することが大切です。
お子さまのMFTトレーニング
お子さまのMFTでは、身体や顎の成長発育の段階に合わせて、正しい口腔機能を身につけることを重視します。舌や唇、頬などの筋肉を適切に使う練習に加え、正しい舌の位置や鼻呼吸、咀嚼、嚥下、発音などの習慣を身につけることを目指します。
小児期のMFTは、健全な歯並びの形成や口腔機能の発達をサポートする目的で行われています。
お子さまの場合も年齢だけで一律に内容が決まるわけではなく、現在のお口の状態や口腔習癖、矯正治療の有無などを確認したうえで、一人ひとりに適したトレーニングを行うことが大切です。
そのため、口呼吸や指しゃぶり、舌の突き出し、頬杖など日常的な癖に気づくことも適切なトレーニングを選択するために重要です。
MFTが効果的なケース

MFT(口腔筋機能療法)は、舌・唇・頬などの口周りの筋肉を正しく動かせるようにするためのトレーニングで、日ごろから無意識に行っている呼吸、咀嚼、嚥下、発音などの癖を整え、健全な歯並びや正しいお口の機能を定着させる目的で行われています。
MFTにはさまざまな種類があり、お口の状態や目的に合わせていくつかのメニューを組み合わせて実施します。ここでは、基本的なMFTトレーニングのやり方をご紹介します。
スポットポジション
スポットポジションとは、安静時(口を閉じているとき)に舌先を置いておく適切な位置のことです。上の前歯の少し後ろにある、歯ぐきの膨らんだ部分を「スポット」と呼びます。
舌先を常にスポットへ置く習慣をつけることで、低位舌を防ぎ、鼻呼吸へと誘導する土台を作ります。
やり方
- スティック(アイスの棒や割り箸など)の先端で、スポットの位置を5秒ほど軽く押して位置を意識させます。
- スティックを離し、舌先をスポットへ5秒間ピタッと当てます。
- 舌先が上の前歯に直接触れないように注意しながら、この動作を5~10回繰り返します。
ポッピング
ポッピング(バルーントレーニング)は、舌全体を上顎(口蓋)に吸い上げる筋力を鍛えるトレーニングです。舌の裏側にある筋(舌小帯:ぜつしょうたい)を伸ばす効果もあります。舌を持ち上げる筋力が弱い方や、普段から舌の位置が下がっている方に効果的です。
やり方
- 舌先を「スポット」に当てた状態で、舌全体を上顎にピタッと吸い付けます。
- 口を大きく開け、舌の裏側の筋がピンと伸びているのを確認します。
- 舌を上顎から勢いよく離し、「ポンッ」と音を鳴らします。
- これを10~15回ほど繰り返します。
ティップ
ティップは、舌先を尖らせる感覚と、舌の押し返す筋力を養うための練習です。
舌先を細かくコントロールできるようになることで、発音の改善や、繊細な舌の動きの習得に役立ちます。
やり方
- スティックやアイスの棒などを、口の前に垂直に持ちます。
- 舌先を尖らせた状態で舌をまっすぐ前に出し、スティックと3秒間押し合います。
- 力を抜いて口を閉じ、少し休みます。
- この動作を5~10回繰り返します。
スラープスワロー
スラープスワローは、正しい飲み込み方(嚥下運動)を習得するためのトレーニングです。
飲み込む際に舌を前歯に押し付けてしまう癖(異常嚥下癖)がある方に適しています。
やり方
- 舌先をスポットに置いて舌全体を上顎に吸い上げます。
- 犬歯(前から3番目の歯)の後ろに細めのストローを置いて、奥歯を軽く噛み合わせます。※ストローが曲がらない程度に軽く噛む
- スプレーなどを使って、口角(口の横)から少量の水を入れます。
- 音を立てながら、水を奥へ引き込みます。
- 舌先をスポットから離さず、舌全体を上顎に押し当てながら水をゴクンと飲み込みます。
- この動作を20回繰り返します。
ポスチャー
ポスチャーは、トレーニングで覚えた「正しい舌の位置」と「お口の閉じ方」を日常の安静時に保持・定着させる訓練です。
特定の動作だけでなく、無意識の時も「舌は上顎、口は閉じる、鼻呼吸」という正しい姿勢を定着させることが最終的なゴールとなります。
やり方
- 姿勢を正し、舌先をスポットに置きます。
- 舌全体を上顎に軽く吸い付けた状態を維持します。
- 犬歯の後ろに細めのストローを置いて軽く噛み、唇をやさしく閉じます。
- テレビを見ているときや読書中など、まずは1回あたり5分程度から始め、慣れたら徐々に時間を伸ばしていきましょう。
ボタンプル
ボタンプルは、唇の筋力を鍛え、口をしっかりと閉じる力を育てるためのトレーニングです。
唇の筋力がつくことで、自然と口が閉じるようになり、鼻呼吸へのスムーズな移行を促します。
やり方
- 大きめのボタンに紐や糸を通します。
- ボタンを歯と唇の間に挟み、唇の力だけでギュッと保持します。
- 紐の端を引っ張り、ボタンが飛び出さないように唇の力で抑えます。
- 1回につき10秒程度キープし、数回繰り返します。
MFTトレーニングの注意点

MFTは、お口周りの筋肉のバランスを整え、正しく機能させるために効果的なトレーニングです。
しかし、ただトレーニングに取り組むだけでは十分な効果が得られない場合もあります。トレーニングを進めるうえで押さえておきたい主な注意点をご紹介します。
継続しないと効果を得にくい
MFTの目的は、単に筋肉を鍛えるだけではなく、習慣になっている口腔周囲の「悪習癖(口呼吸や舌を突き出す癖など)」を取り除き、正しい舌の位置や動きを定着させることにあります。
そのため、数日集中的に行ったからといってすぐに改善するものではありません。筋肉の記憶や習慣を変えるためには、毎日数分ずつでも継続して取り組むことが大切です。
途中でやめてしまうと、せっかく鍛えた筋肉や正しい使い方の感覚が元に戻ってしまうため、日々の生活の中にトレーニングを組み込む必要があります。
正しい方法で行う必要がある
MFTは正しいフォームや舌の位置を意識して行って初めて効果を発揮します。自己流で適当に行ってしまうと、意図しない別の筋肉に余計な力が入ってしまったり、間違った口の動き(代償動作)が癖になってしまったりすることがあります。
特に、舌のポジション(スポット)や飲み込みの練習(スラープスワローなど)は、微妙な位置の違いや力の入れ具合が重要になります。
「回数をこなすこと」よりも「正しいフォームで1回1回丁寧に行うこと」を意識しましょう。
歯科医院で定期的に確認してもらう
ご自宅でのトレーニングを効果的なものにするためには、定期的に歯科医師や歯科衛生士によるチェックを受けることが不可欠です。
自分では正しくできているつもりでも、知らず知らずのうちに癖が戻っていたり、自己流の動作になっていたりすることがよくあります。
クリニックでの定期チェックで、筋力の改善度合いの評価、現在のステップに応じた新しいメニューへの移行、フォームの修正指導を適切に受けることができます。
また、専門家によるフィードバックを受けることで、トレーニングのモチベーション維持にもつながります。
保護者の方のサポートが必要になる
お子さまがMFTに取り組む場合、ご本人だけの力で毎日正しくトレーニングを継続することは非常に困難です。
トレーニングのやり方を理解しにくかったり、途中で飽きてしまったりすることも多いため、保護者の方がしっかりと寄り添い、サポートすることが成功の大きなカギとなります。
「毎日決まった時間に声をかける」「一緒に楽しく取り組む」「正しくできたら褒める」といった関わり方が大切です。ご家庭での温かいサポートと声掛けが、お子様のモチベーションを高め、正しい口腔習慣の獲得へと導きます。
MTFトレーニングを継続するコツ
MFTの効果を高めるためには、日々のトレーニングを「特別な課題」にせず、無理なく生活の一部に組み込むことが大切です。ここでは、トレーニングを継続するコツをご紹介します。
まずは、トレーニングをルーティン化しましょう。「歯磨きの後」「お風呂に入っているとき」「テレビを見ている時間」など、生活習慣とセットにすることで忘れずに続けやすくなります。
また、最初から完璧を求めずに、まずは「1日1回」「1分だけ」など、無理のない目標から始めることもポイントです。カレンダーにシールを貼るなど、成果を目に見える形にするとモチベーションが維持しやすくなります。
お子さまがMFTに取り組む場合は、保護者の方やご家族が一緒に体験したり、できたことを褒めたりしながら、楽しく続けられる環境づくりをしましょう。正しい方法で行えているか定期的に歯科医院で確認しながら、焦らずに継続することが大切です。
MFTを検討している方は、横浜市瀬谷区の「三ツ境駅前スマイル歯科」にご相談ください

今回は、MFTトレーニングの基本的なやり方や継続するためのポイント、トレーニングを行う際の注意点について、わかりやすく解説しました。
MFTには、さまざまなメニューがあり、患者様一人ひとりのお口の状態や日常の癖に合わせて、適切な方法を選択することが大切です。
しかし、MFTのトレーニングは数日間行っただけで癖が改善されたり、正しい習慣が身についたりするわけではありません。
正しいフォームを意識しながら毎日継続して行うことが、MFTの効果を最大限に発揮し、正しい筋肉の使い方や健康な口腔機能の獲得につながります。
三ツ境駅前スマイル歯科では、一般社団法人日本小児矯正研究会の指導医の院長が、患者様一人ひとりのお口の状態を丁寧に診察し、適切な治療計画をご提案します。
新規矯正相談は、公式LINEからご予約いただけます。また、ご来院が難しい方向けに、オンラインでの相談にも対応しています。
お口の癖にお悩みの方やMFTをご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。